管理者とリーダーは何が違う?

1980年代、特に製造業において、日本が米国に大きな影響を及ぼした時代、米国で「変革型リーダーシップ」という概念が生まれました。そのなかの1つに「リーダーシップとマネージャーは異なる」という考え方があります。マネージャーは「管理」をするのが仕事で、リーダーは「変革」がその役割というものです。当時、未熟だった私は疑問を覚えながらも「そうなんだ、これからはリーダーが重要なんだ」と思ったものです。

日本の経営コンサルタントの草分けといえる畠山芳雄は、管理者には維持機能、育成機能、革新機能という3つの仕事があるといいました。維持機能というのは、たとえば現在の品質や業績を維持すること。育成は部下を育てること。革新は改善をはじめ技術や事業を変革させることです。いわれてみれば、戦後裸足(はだし)で働いてきた日本人にとって、リーダーもマネージャーも違いはないわけです。事業を創造しながらマネジメントも行ってきたのですから。

ところで現在、複数の人事プロジェクトのコンサルティングをさせていただいていますが、そこで感じるのは、管理者がメンバーの評価を適切に行うことができていないということ。当然、育成のスタイルもありません。何故そうなったのか。コスト削減が進んだ結果、企業内において「プレイングマネージャー」が増えたことが大きいと私は考えます。自らスペシャリストとして担当を持ちながら、予算管理、目標管理、リスクマネジメントそして事業創造のようなプロジェクトまで行うのはしょせん無理があります。当然、マネジメントは不在となり、部下の育成どころか、何をやってもうまくいかなくなります。

カナダの経営学者、ヘンリー・ミンツバーグはこういいます。
「憂慮すべきなのは、マイクロマネジャーではなく、おおざっぱにリーダーシップを振るいすぎるマクロリーダーだ。現場を知ろうとせずに大きなビジョンだけを振りかざし、遠隔操作でマネジメントを行う風潮がある。(中略)リーダーとマネージャーを別物と考えるのではなく、両者を一体のものとみなし、リーダーシップとは成功しているマネジメントのことだと理解する必要がある。」

オーセンティック(本物の)リーダーシップでは真摯さが重要であり、米国海軍士官においては人道的リーダーシップがなければ現場でリーダーシップを発揮することはできないといわれます。人道的というのは信頼関係です。ミンツバーグの言葉を借りれば、それは「サイエンスの領域ではなくアートな領域で形成されるもの」であるように思われます。

インターネットはネットワークを強化するかもしれませんが、コミュニティを強化するとは限りません。戦闘集団であるチームの強さを決定づけるのは、コミュニティのメンバー同士の関係、特に信頼と尊敬です。

プレイングマネージャーというのであれば、プレイングというのは担当業務を持つことではなく、自分にしかできないこと、後世に残るようなことについて挑戦することではないでしょうか。そして部下とその仕事ぶりをじっと観察します。多くの業務をこなしながら責任も問われ、残業代もつかない。しかも信頼関係も築けないとしたら、誰もそのような管理者になりたいとは思わないでしょう。人事(コンサルティング)の本質は、自然とリーダー(マネージャー)が育つ組織文化を築くことにあると私は考えます。

執筆者:宮川 雅明

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