人事担当者としての感度を高める~データなの?感度なの?人事業務の本質考える~

■ 人事分野で考えるAIの経験学習

世の中が大きな変革期にある今、人事分野でもHRテクノロジーの活用が注目されます。とくにAIやIoTなどの急速な技術の発展がもたらす新たなサービスは、人事分野にも増えていくでしょう。

AIなどの研究者であるオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士は、2015年に発表した論文『雇用の未来--コンピューター化によって仕事は失われるのか』のなかで、あと10年から20年で、消えてなくなる職業・なくなる仕事について述べています。

たとえばその中にも挙げられている「電話オペレーター」や「苦情の処理・調査担当者」については、すでに「なくなる」ことが現実のものとなりはじめているのではないでしょうか。従来のデータを活用できるものは、AIがそこから問い合わせに適した解を提供することができます。お客様の満足度も高まっているといいますし、経営面の効果も見られるでしょう。

他にも「弁護士助手」のように、膨大な判例から該当する情報をいち早く選択する業務はAIが得意とする分野です。状況が複雑で一筋縄ではいかない業務とされていましたが、学習するAIは経験値を重ねることで適正な解とロジックを導くことができるようになっていきます。「ホテルの受付」もなくなる仕事に挙げられていましたが、ハウステンボス株式会社が運営する「変なホテル」のように、ロボットの窓口対応がはじまっています。接客という業務にも変化が訪れているのです。

定型化された業務をシステムで効率的に処理することに加えて、経験から学習して最適解を導いていくAIの世界は、HRテクノロジーとしても大いに影響を与えそうです。

■ 感度を高めて気づく変化

人が得意としていた判断業務・熟練業務にも影響する、静かなる大きな変化が進展する一方、普遍的な人の力も改めて注目されます。

たとえばJR九州会長の唐池恒二氏の著書『やる!』からは社会変化が進む中でも変わらない「人の感度」の価値について気づかされます。

唐池氏はデザイン列車の誕生を後押ししたことや、「あそぼーい」・「ゆふいんの森」など名付け親としても知られる、新しいサービスや業態を生み出し続けてきた方です。こうしたアイデアは、街を歩いているときに、おやっと気になって目がとまるところから始まるそうです。たとえば新商品を紹介したポスターに目がとまったとすると、ポスターに目がとまったこと自体を振り返ります。ポスターの構成には、大きさ・素材・写真・コピーや登場する人物などいろいろな要素が含まれています。そのなかのどれに自分は興味を惹かれたのかを考えてみる。それが、画期的な結果をもたらすアイデアや手法の引き出しになっていきます。

漫然と歩いているだけでは、こういった視点を手に入れることは出来ません。唐池氏の著書からは、気づきの学習の大切さが人を成長させることが示唆されます。日常的に鵜の目鷹の目で周りを見ることから、自然と意識づけが高まっていくのです。大量のデータから学習するAIの活用も重要ですが、日常的な意識行動から感度を磨き、感性を高めることも大いに必要なのです。

元ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの森岡毅氏の話からも、感度を高めることがビジネス成果をもたらすことに気づかされます。大成功した取り組みの一つに、後ろ向きに走るジェットコースターと新たなイベント企画がありました。実はそのアイデアは簡単に出てきたものではなく、現場を歩いて寝ても覚めても考えに考え抜いた結果だといいます。考えに考え抜くことで、あらゆる周囲のものに対して、ヒントになることはないか、感度が高まります。それがお客様に支持されるアイデアの源泉となっています。

人事という業務も、定型的なものから判断・熟練型まで幅広い領域があります。すでにITを活用して効率的に進んでいるものは多くあるでしょうし、いずれAIがより活躍する状況も出てくるでしょう。ぜひHR Techの進展は注目・活用したいものです。

一方で、人事が扱う領域は、人の感情や組織風土・文化など、目に見えない性質のものへの理解が欠かせない面を持ちます。そのために感度が必要です。感度を上げる本質は現場を知るところにあります。現場で動く感情や背景を理解する、すなわち人への興味関心です。いくらデータで行動を理解できたとしても、人事の質は、現場すなわち人との対話の頻度を増やすところから高まります。ただ処理するような業務姿勢だと、システムに置き換えられる時代がすでに来ています。人事は目に見えない感情や風土へのアプローチも含めながら、構成員の力が真に発揮される状態づくりを考え抜くところに、注力していく必要が高まるでしょう。

執筆:人事コンサルタント
廣岡 久生

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