組織に起きているパラダイムシフト(上)~マネジメントは「研修」から「研究」の時代へ~

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2018年02月01日

■ 仕事軸から人軸への転換

長年、組織づくりや企業コンサルティングに携わってきた中で、今、働く人のパラダイムシフトが起きていると感じています。企業論理でスキル要件を定め、その要件を基準に人材育成や評価をおこなった時代から、個々人に焦点をあて、それぞれの能力発揮を最大化するために組織論理を組み合わせる時代へのシフトです。つまり仕事軸だけに焦点をあてるのか、それとも人軸にも焦点をあてる職場マネジメントなのかの違いと言えます。

そう考えると、人軸に焦点をあてたマネジメントが重要になってきているのではないでしょうか。一人ひとりの能力や資質などの「タレント」を企業側が管理し、戦略的な人事をおこなっていく考え方です。

しかしいきなり「人」軸と言われてもピンとこないマネジャーも多いのではないでしょうか。ある会社で、マネジャーと現場との対話をつくりだす支援をしてほしいという相談をされたことがありました。中期経営計画達成に向けて必要なのは、現場の一人ひとりが力を発揮することだと方向性は見えたのですが、実際にどうしていいかわからない。

多様化が進み、社会の成熟度もあがるなかで、マネジメントスタイルもかつての上司や先輩のやり方では通用しなくなってきています。マネジャー自身もそれに気づいてはいるのですが、どうやって変えていいかわからない。そこで結局自分が上司や先輩から受け継いだものと同じようなスタイルの職場マネジメントをしてしまっている例を多く見ます。

それに気づいた上記の会社では、「こうあるべき」という研修ではなく、「マネジメント研究」を参加マネジャー達とともに進めていくプログラムを始めました。一人ひとりが、この時代にあった、もしくは今後主流になる職場マネジメントの手法を研究する必要がある。それを4回シリーズで進めるというプログラムです。

月1回ペースで進めるので、開催の間に時間があります。毎回の開催プログラム内でつくった課題設定や仮説を職場に持ち帰り、1ヶ月「実験・検証」してきてもらいます。次の回にその「実験結果」を持ち寄り、グループで「研究」し、クラス全体で「研究発表」する。自分で考えて自分で検証し、また仲間同士で実践結果を交流することから、職場マネジメントの世界で時々刻々で起きている変化へ柔軟に対応していける力を磨いていくことが、その場で得られるノウハウであり成果です。

「皆勤賞」という言葉があったように、月曜から金曜まで、定時に来て同じオフィスで仕事して...という時代から、働く時間や場所が多様化し、育児や介護などライフイベントとの調整も積極的に進められる時代になってきました。実はこれはマネジメント観点で言うと「難易度」が上がったともいえます。違う雇用形態、違う事情の人を束ねるマネジメントは過去とはずいぶん違っているはずです。その違いに気づかないまま、従来のマネジメントをしてしまうと職場が「回らない」状態が出てきがちです。様々な事情を加味してあげたい、でも職場が「回らない」......となって、結局マネジャー自身が残業してカバーすることで何とかすることになってしまう。そもそもどういうマネジメントスタイルであるべきなのかと考えないと、もたなくなっているのです。

その時に必要な基本情報が、チームの構成メンバーの人軸情報です。 目標・育成・評価面談など、以前に比べれば格段に話し合いの機会はつくられているかもしれません。しかし「この職場で成長するために」「この職場で仕事成果を出すために」という話は、仕事軸をもとにしたコミュニケーションでしかありません。評価面談の時にはもちろんその話が必要ですが、そのほかの機会に、人軸のコミュニケーションをすることはあるでしょうか。

今回の「研究」プログラムの中で、「自分の部下3名の名前を書いて、それぞれ『達成したいと思っていること』『勉強したいと思っていること』『今の興味・関心』を書いてください」と用紙を配ると、みんな大体うなります。わからない...書けない...となる方が大半ですので「まずは仮説を書き込んでください」とお願いします。想像で埋めてもらうのです。

「研究」中なので、この想像という仮説を検証してきてもらいます。1ヶ月後の回までにそれぞれ聞いてきてくれます。「大体あっていた」という方もいますが、「聞いてみないとわからないものだ」「先のことを考えていてびっくりした」「部下の方が広い視野で将来を考えていることがわかり、俺も勉強しないといけないと思った」といった感想が多く出てきます。これが聞き出せたということは人軸のコミュニケーションが進んだということなのです。「こういう事を考えているんだったら、仕事の配分とか配置とかを考えた方がいいと思った」という感想も出てくるように、人軸のコミュニケーションが進むと、職場マネジメントにおける打ち手が見えやすくなります。

研究の最後には縦軸に「ビジネス成果」、横軸に「人組織の持続的成長」というチャートをつくっています。すると中に「現状」と「1年後に目指したい状態」を書き込むことができます。多くの組織では、縦軸のビジネス成果についてはある程度の「打ち手」が描けていることでしょう。横軸も同様に、「現状」と「目指したい状態」のギャップをどのように埋めるか、書き出してみます。するとそれ自体を職場マネジメント方針として具体的に設定することができるようになるのです。

執筆:いきいき職人 / 一般社団法人チームスキル研究所 理事・研究所長 田中 信

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