組織に起きているパラダイムシフト(下)~「戸惑いポイント」にヒントがある~

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2018年02月01日

■ マネジメントの年度計画

前回は、「マネジメント研究」の最後につくる「職場マネジメント方針」づくりについてご紹介しました。そのあと、この場ではプラニングまでおこなってもらいます。職場をどうマネジメントするかという年度計画です。4月に部のキックオフミーティング、期初の面談、チームビルディング機会を年間何回か設定したり、お互いを知るイベントや、上期の振り返り...など、ある程度計画している組織は多いかもしれませんが、人軸のマネジメントを起点にしているのは少ないのではないでしょうか。そのプランに懸念されること、戸惑いが起こりそうなこと、もやもやすること、なども書き込んでいきます。さらに、自分たちの体質はどうで、チャレンジはどう起こり、尊敬や尊重はどのような状態にあるか。風土面に関わることも書き込めれば、リアリティが増してきます。

従業員満足度調査などのサーベイを行うと、点数の低いところ、できていないところというのが見えてきます。ポイントは、できていないことに立ち向かう、または逃げてしまうということではなく、職場のマネジメント上の課題に気づき「戸惑う」ことを是とするところにあると思っています。ビジネス感覚的には、「戸惑う」ことがあまりポジティブなイメージではないかもしれません。しかし通常、人間は新しい事に出会うと戸惑います。その戸惑いを起こし、扱えるようになる力というのが実は管理職のコア・コンピタンスに入ってきていると思います。
 
一般的には、できていないことを「難しい」「必要ない」「無理だ」といって排除していき、戸惑わなくていい状態にしようとします。その方が安定感を得られるからです。しかし「戸惑い」を是とすると、コミュニケーションの質もよくなってきます。

前回紹介した「マネジメント研究」型のプログラムでは、課題を見つけたときに「難しい」と終わらせず、「戸惑いポイントは...」とマネジャー同士で言い合う習慣づけが進みました。そして色々な話題を提示しながら、各自の職場チームで語り合う機会をつくってもらっています。おそらく「戸惑っていい」という前提があるからでしょうか。お互いの意見をいったん受け入れる対話がずいぶん進むようです。「そういうことを考えていたならこの仕事を手伝ってもらえる?」「そういう考え方だから品質にこだわるんだ」「こんな人を知っているから紹介するよ」と、対話を通じて新たな距離感ができてきます。いわゆる「心理的安全性」が高まってくるのです。

この関係性ができると、相互の協力や高めあいが自然と起こりはじめます。私はこれを「オン・ザ・チーム・トレーニング(OTT)」と呼んでいます。仕事軸に沿ったコミュニケーションだと、どうしても役職や経験が上の人の方が発言しやすくなる。しかし人軸に沿ったコミュニケーションに帰ると、意見をフラットに言いやすくなります。この状態がつくれると、業務上のコミュニケーションも円滑になります。さらに主張のぶつかり合いによる建設的な議論ができるようになります。本質的な意見のぶつかりあいが起きてはじめて、いいコラボレーションも生まれます。

冒頭の「職場マネジメント・プラン」をマネジャーが自分一人だけでつくるのではなく、はじめから部下とつくったという人もいます。事業計画を現場メンバーと議論しながらつくることがあるように、職場運営の計画も部下を巻き込むことは当然考えられます。その過程で必然的に目指す成果や組織目的が議論されることになるでしょう。プロセスを共有するのは、同じ方向性を向くための有効な手段です。

一人ひとりが力を発揮し、組織が活性化する先に事業成果が生まれる。組織開発はそうした文脈の中で有効性が注目されますが、そのためのミクロな働きかけが職場マネジメントで重要になっています。人軸で相互理解が進み、それぞれの活躍の場が広がり、発言が活発になされるチームになる。その先に起こる主張の対立は、最終的には新たな価値創出の源となっていく。この状態づくりが現代に求められている職場マネジメントの役割ではないでしょうか。

執筆:いきいき職人 / 一般社団法人チームスキル研究所 理事・研究所長
田中 信

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