「時間の振り返り」とドラッカー

ドラッカーなど興味はないという方もいらっしゃるでしょうが、どうぞお付き合いください。経営学者、ピーター・ドラッカーは知識労働者に対して、次のように述べています。

「知識労働者が成果を上げるための第一歩は、実際の時間の使い方を記録することである。大切なのは、記録することである。記憶によってあとで記録するのではなく、リアルタイムに記録することである」

"先週40時間、あなたはいくつのアウトプットを出しました。そこに投資した時間は健全でしたか"

この問いに答えられる人はほとんどいません。

たとえば、戦略を立案するときに、多くの人びとは外部環境の考察から始めます。しかし、イノベーション(変革)というのは、内なるものが動機となっていることが多いように思われます。時流をつかむことはもちろん大切ですが、外圧で変化せざるを得ないというのは、あまり好ましくないのではないでしょうか。

20年ほど前、IBM会長ルイス・ガースナー(当時)はこういいました。「戦略はわかっている。問題は徹底実践(execution)できるかどうかだ。」

決めたことができない、計画したことができないとなれば、価値ある戦略も意味をなさないでしょう。仕事に関する助言というと、計画しなさいから始まるものが多い。誠にもっともらしい。問題は、それではうまくいかないことにある。計画は紙の上に残り、やるつもりのないまま終わるイノベーションの原動力は知的内省にあります。そして、その基本は「時間の振り返り」にあるのではないでしょうか。

最近知られるようになった言葉で「VSOP」というのがあります。お酒の名前ではなく、働き方を示唆したものです。20代はVitality、30代はSpecialty、40代はOriginality、50代はPersonalityというものです。

30年以上前になると思いますが、ある有名な企業で使われていたのが次の言葉です。「20代はがむしゃらに働け。品質や納期というのは体で覚えないと身につかない。体力のある若い時に無我夢中で仕事に励み技術やものの見方・考え方を盗む。30代になったら、これでメシが食えるという技術を身につけろ。40代は一番仕事ができる年代。よって大小問わず歴史に残る仕事をやる。

ドラッカーはリーダーシップについてこう語っています。「一流のリーダーは多くの仕事について権限委譲する。雑事に埋もれず、自分にしかできないことを、模範となること、長く影響の残ることについては自ら行う」。

50代は「ああいう人になりたい」と言わせる。修羅場を何度もくぐるなかで蓄積された"徳"のようなものです。

さて、あなたにはそんな師匠といえる人がいますか。「一緒に仕事をさせてください」といえる師匠がいますか。いないとすれば残念な話です。

時間の使い方に話題を変えましょう。「がむしゃらに働け」というとブラック企業のような印象を持たれますが、少なくとも私が育った時代は、徹夜作業でも先輩が弁当をどこからか持ってきて、「がんばっているな、まあメシでも食え」「よし、一緒にやって片づけよう」といったものです。不出来な部下を決してあきらめることなく、一緒の時間を過ごし、育ててくれたものです。

ドラッカーもいっています。「上司たるもの部下を育てる責任がある」。かつて、リーダーには愛情がありました。

執筆者:宮川 雅明

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