イノベーションに関する多くの書籍が出版されています。イノベーションの標準化が進んでいる証です。大学院で学ぶ「戦略」や「マーケティング」の講義では、ポジショニングやケイパビリティの考え方が主流でしたが、いまはイノベーションが注目されています。

経営学は「メタアナリシス」、つまり多くの事例から共通する要素を見出し、一つの概念とします。したがって、多くの事例には当てはまりますが、異常値のような事例には当てはまりません。しかし、実際には異常値のほうが多くあります。新規の事例に過去のモデルを当てはめてもムダです。社会や技術の変化は、リニア(線型)な発想ではなく、新たな発想で見ていく必要があります。

ヘンリー・ミンツバーグは、不確実な環境下では正しい戦略を知っているかのような意図的な行動ではなく、正しい戦略が市場から『わき出る』ような、創発するようなアプローチを採用すべきといっています。同様のことをジム・コリンズやクレイトン・クリステンセンもいっています。起業家が最初から正しい戦略を持っていることはめったにありません。

36年間コンサルタントをさせていただき一つ感謝していることがあります。コンサルティングのテーマや形態に時代の背景があり、大局的に観る感覚が養われたことです。戦略フレームワークの「PEST分析」はポジショニングのなかで必ず紹介される手法ですが、起業や戦略を考えるうえで、最もエッセンシャルなものだと思っています。新聞や雑誌の記事などのバズレポートを含め、さまざまな情報に触れるなかで、パースペクティブ(見通し)は生まれてきます。

厄介で楽しいのは、グローバルなネットワーク社会において、情報は多様で変化に富んでいるということです。さまざまな情報に感度の高いアンテナを広げる必要があります。特に事業創造に関わるものは、多くの情報に触れる時間を持ち、効率的(その場で仮説を出し、検証する)に処理しないといけません。

さらに、多様な「知」がオープンに入ってくる環境を持つことが大切です。留意すべきことは、パソコンやスマホだけに依存してはいけないということ。エスノグラフィー的調査手法、つまり現場観察が必要です。リアルに人を観て、そして対話することでパースペクティブ(見通し)が感度の良いアイデアへと触発され変化していくのです。

なぜ、現場観察が大切なのでしょうか? それは、現場観察が検証に最適だからです。ビッグデータになる前に、一つの象徴的な事例が確信を与えてくれることがあります。実際に実験する勇気を出すには確信が必要です。もう一つ、経営は人のためになる、人から感謝されるものでないといけないからです。感動ともいえるそれを感じるには、現場に立っていないといけないと私は思います。

執筆:宮川 雅明

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