報酬制度と事業ポートフォリオ

人事制度の報酬制度において同じ質問がくる。既存の事業に新規事業が加わったことで評価尺度や報酬制度がマッチしなくなったというものだ。

企業が継続するには成長が前提である。確かに新規事業を始めれば初期投資が大きく、キャッシュインは少ない。直ぐに成長するとは限らないからだ。下手をすればサンクコストになってしまう。

システムや設備の保守・運用事業であれば安定的な売上が見込めるが、大きな利益や急成長は見込みにくい。

介護業界に進出する会社も多いが、介護という事業は規模の不経済が働き生産性が向上しにくい。サービス内容や価格も介護保険制度で決められ付加価値も付けにくい。

どのような事業にもそれぞれ事業特性というものがあり、事業特性に応じた業務特性というものがある。更に、組織特有の組織特性(平均年齢が高い、顧客先へ常駐するなど)がある。

戦略がビジネスモデルの時代に入り、業界という概念も壊れつつあり、ダイナミックケイパビリティが求められる時代になった。よって、市場や特性が異なる事業への展開が加速される。結果、既製服のような人事制度では間尺に合わない事業も出てくることになる。

必然ではあるが、既存事業には従来からの関係や習熟などから主にベテラン層が従事し、新規事業系には若手が就くことが多くなる。新規事業は急成長する可能性もあるので(その逆もあるが)、業績に連動した報酬が求めれることが多くなる。

さて、どうしたものか。

顧客や市場が異なれば戦略も異なるので組織や制度も異なって不思議ではない。しかし、ビジネスモデルの時代に突入したことで多様なビジネスモデルが社内に存在するようになる。

働き方の多様性が求められるように、事業にはライフサイクルがあり、成長期もあれば成熟期もある。

成熟期でポジションが高ければキャッシュカウとなる。そのキャッシュを黎明期の事業へ投資配分するのである。経営の多くは、複数の事業のバランスから成る。勿論、一定の規模になれば別会社化という選択肢もあり、制度も分けることになる。自事業だけにとらわれ制度を捉えるのではなく全体的な視点で捉えることが大事だ。

個々人は自事業だけにとらわれず、全社で各事業のポジショニングを踏まえた上で、経営全体が成り立っているのかを意識する必要がある。中には、自分はハイリスクハイリターンで良いという人もいると思うが、ベンチャーの多くは資金繰りが原因で倒産する。倒産の原因の多くは人件費と在庫である。

有名なマズローの欲求階層説しかり、ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」でいうアダム的欲求が満たされているから挑戦できる環境でいられるのだ。(マクレガー「X理論Y理論」X理論)

報酬制度に限らず、人事制度というのは、企業戦略という視点からとらえるものであり、社員の納得感や共感もより高い次元のものとなる。

執筆:宮川 雅明

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