イノベーションと組織

気のせいだろうか。最近、ホワイトカラー系の改善に関する問い合わせが多い。働き方改革の影響もあるだろう。

イノベーションチームと改善チームが同じ部門内にある大手企業がある。シュンペーターは、イノベーションは非連続なものであると指摘している。馬車を繋げても列車にはならないという例えだ。改善というのは現状分析からスタートするので、イノベーションとはかけ離れているように思いえる。本当にそうだろうか。オペレーショナル・エクセレンスの代表格としてMBAのケーススタディで取り上げられているトヨタ自動車は、世界で最初にハイブリッド車を量産し、水素車を生み出した。

オープン・イノベーションやユーザー・イノベーションという考え方は外からの智慧をダイナミックに活用すること(ダイナミック・ケイパビリティ)である。シュンペーターは新しいニーズが消費者側から湧きおこるより、むしろ生産者側からニーズを創造すべきといっている。ゆったり考えれば両方あってよいという雰囲気であるが、戦略は外部から学ぶもので変革は内なるものから起きるべきと考えれば、非連続で断絶的なものは後者となる。外の声に耳を傾ける能力とそれを糧にする能力を有していなければただ情報を整理するだけになる。

そして改善の話であるが、改善の本質は現状否定である。虚心坦懐に考える訳でやめたら何が困るかを考える。むしろ一旦廃止してみようという発想である。ホワイトカラーの改善8原則の1番目が廃止で2番目が削減である。そのように考えるとkaizenの代表格であるトヨタ自動車がイノベーションを創出するのも頷ける(もっと凄いことを考えているに違いないが)。

シュンペーターはイノベーションには5つの新結合が必要だといっている。その5番目に新しい組織をあげている。なかなか既存の組織ではイノベーションは生まれないのだろう。20年近く前になるが、ソニーの伊庭 保氏(当時副社長)に話を伺ったことがある。その際、"組織を柔軟に変化させなければ大企業病になってしまう"と話していた。現在はサプライチェーン全体をとらえ戦略を構築する時代に入った。よって、業界という捉え方もダイナミックに変化し、アライアンスという手法も必然の時代になり、資金調達も多様になってきた。5つの新結合でいう新し財貨、新しい生産方式、新しい販路、新しい供給源が見えてくる。

冒頭に触れたイノベーションチームと改善チームが同じ部門内にある大手企業であるが、同じチーム内にあるのだが全く連携が見られない。コストダウンを目的とするチームと創発をしようとするチーム。無理に連携する必要はないともいえるが、プロセスは異なっても根底にある発想や目指すものは同じ世界にいるかもしれない。経営資源は有限であるから新しいことに挑戦するには既存の経営資源をシフトしなければならない。新たな経営資源を調達するという方法もあるが、それは"規模の経済"を追求するモデルであれば足し算が有効かもしれない一方、全てが同様の競争モデルとは限らないし、中小企業にとっては困難な選択肢である。

さて、2つのチームが同じ部内にあるこの会社であるが、どうしたものだろうか。新結合の5番目の新しい組織というのを使って、同じチームにしたらどうか。そういえばトヨタ自動車グループもダイナミックに組織を変える、或いは動かす能力が長けているかもしれない。

組織を考えた時に、時々組織を変えた方がよいという考え方がある。理屈ではなく、環境を変え気分を変え景色を変えることで発想を変える。時には部屋の模様替え、或いは引っ越しも理屈抜きにやってみてはどうだろうか。

執筆:宮川 雅明

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