就業機会~主体的に働き、生きる~

昔は父親が課長に昇進すると赤飯を炊いた時代があった。定年も多くは55歳だった。現在、寿命がのびているためか、或いは年金財政の状況で支給開始年齢の引き上げが影響しているのか、定年が60歳そして65歳と引き上げられている。改正高年齢雇用安定法では、希望する従業員全員が65歳まで雇用確保するよう定められた。60歳未満定年制が禁止されたのは1998年であるので最近の話である。20年間隔で大きく変わるような気がする。

60歳定年企業は80%を切り減少傾向にあるようだ。一方、65歳定年は約16%で増加傾向にある。ホンダや日本ガイシは、2017年に65歳定年制を導入している。ちなみに66歳以上定年は約1.5%である。国家公務員の65歳定年も2019年通常国会で提案される見込みだ。では、定年後も働きたいと思っている人の理由は何だろうか。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査(2015年)を参考にすると、1位「現在の生活のため...78.5%」、2位「老後の生活に備えて...47.0%」で「自分の経験や能力を活かしたい」は31.8%:5位である。では、週に何時間くらい働きたいかというと、「40~50時間未満...42.3%」、「30~40時間未満...36.3%」で、「20~30時間未満...6.6%」である。大半がフルタイムを希望しているということだ。働かざるを得ない現状が見えてくる。継続雇用になっても定年後の報酬面は半減することが多く、厳しい。
 
米国では、ウーバーのドライバーの4人に1人が50歳以上である。エアビーアンドビーのホストの約1割が60歳以上である。その背景を立証するものとして、米国立退職貯蓄研究所の試算がある。2015年において米国の全世帯の貯蓄残高は2500ドル(中央値)で、55~64歳の労働者で年収以上を貯金しているのは3人に1人だという。欧州では、同世代の2人に1人が働いている状況だ。老後の厳しさはどこも似たような状況のようだ。つまり高齢化は日本だけの問題ではなく世界的に進んでいる。お隣の中国においては、2020年までに約2億人の生産人口が減少するといわれている。それにしても米国の高齢労働者はシェアリングエコノミーやプラットフォームを活用するなど時代の機会をとらえているようだ。

一方、若者(16歳~24歳)の就業状態をみると、こちらも厳しい状況が伺える。米国、英国の失業率は20%を超えている。スペインにいたっては50%超である。EU加盟国全体では、25歳以下の失業率は20%超である。中東諸国にいたっては更に厳しい状況のようだ。国際労働機関(ILO)の調査では、若者の58%が「いい仕事に就く」という希望を捨てているという。また、先進国では24歳以下の若者の3分の1が派遣労働という実態である。

では、高い教育を受ければ就業機会は増えるかというとそうとは限らない。むしろ、就業機会のある地域や国への移住が増えていくだろう。保護主義の動きもあるが、人の移動の方が重要な課題であるように思える。最大の問題は、社会不安である。若者に就業機会がなければ物理的充足はなく、社会参画というジェネラティビティ(E.H.エリクソンのいう次世代の価値へ積極的に参加していくというアイデンティティ)さえなくなってしまう。
 
日本では若者労働力は売り手市場であるが、全体的には40%が非正規雇用である。今、働き方改革が叫ばれているが、就業機会を容易に得て、マルチジョブで働くプラットフォーム社会が求められ、働く側もどのようなキャリアやライフスタイルを描くのか、より主体的で多様でそして楽しい生き方を真剣に考える時代であると言えよう。

執筆:宮川 雅明

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