MaaSとコンパクトシティ

MaaS(マース):Mobility as a Serviceのことである。フィンランドではオープンAPI(Application Programming Interface)で実現されるMaaSフレームワークが示されている。Fleet & Ride Sharing、Multimodal Transportation Services、Connected Vehicles、Smart Payment Systemなど社会システム全体の変化が読み取れる。技術的には実現可能な状態である。

ダイムラーは中長期経営ビジョンとして「技術革新によるモビリティの再構築」を掲げ、CASE(Connected、Autonomous(自動運転)、Sharing、Electric)と名付けた。MaaSやCASEがもたらすものはコンパクトシティである。発電・放電、蓄電の性能(エネルギー効率)が高まることで自律分散型のエネルギー・インフラが実現される。都市部の駐車スペースというのは土地の30%を占めている。これは決して有効利用とはいえない。また、一般車の97%が止まった状態である。稼働時間は3%に過ぎない。私は移動手段として自家用車を多く利用するほうであると自覚しているが、それでも1日24時間のうち10%は使っていないだろう。今ではカーシェアリングは当たり前になってきたが、それはMaaSのほんの一部でしかない。

EVの活用は、Vehicle to Home(V2H:自動車が蓄電池に蓄えた電力を家庭用電力として利用する)からVehicle to Building(V2B:自動車とビルの間で電力の相互供給をする技術やシステム)そしてVehicle to Community(V2C)へと展開されようとしている。既に日産では、駐車している車を使ってVtBを展開している。97%は止まっているのだから活用しない手はない。PEST分析のT(Technological:技術的環境要因)は急速に展開されている。S(Social:社会的環境要因)の視点では、年間60万件の交通事故、12兆円とも言われる渋滞による損失、3千万人の高齢者という社会要因を考えると、低速で走る公共交通機関はそうしたニーズにも適合している。宅配物流も一部路線バスを活用しており、混載物流としての機能も期待される。交通事故の93%はヒューマンエラーといわれている。これはセンシング技術で解消される。

忘れてはいけないもう一つのSは環境である。バッテリーの原材料の話は割愛するが、バッテリーのリユースは福島県双葉郡浪江町のモデルにあるように着実に進んでいる。バッテリーは再生すれば半永久的に利用できる。製造工程だけをみればゼロ・エミッションではないが、ライフサイクル全体を考えればゼロ・エミッションに近づきEVに軍配があがる。

トヨタのコンセプトカー e-Paletteを見ると車のデザインが大きく変わっている。MaaSが当たり前になってくると人にとっての付加価値はEVとかShareとかではなく(それらはコモディティ化してくる)その居住性が鍵となる。キャビン・ファーストである。同じ移動でもどれだけ快適な時間を過ごせるか。経済の発展を人の移動でみると、先進国ほど人の移動(距離)が長い。以前、新幹線に個室があったように、バスも夜間はホテルになるかもしれないし、無人であれば夜間走行も可能となる。未明のサッカー観戦もバスで帰宅できるようになる。新宿のバスタは宿泊場所になるかもしれない。自家用車もお父さんの寝室になるかもしれない。

ビジネスモデルは大きく変わる。車は売る時代からライフサイクル全体からみた稼働をベースとしたものに軸が変わるだろう。MITのエド・ロバート教授によれば、イノベーションとは発明×商業化という。EV技術や生産能力はなくてもビジネスチャンスは沢山ある。

執筆:宮川 雅明

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