評価より行動

先日、あるベンチャー経営者と話をしていた。「実は、人事制度において評価は全くといってよいほど気にしていない。」と話していた。私も社長業を20年ほどやっているが、評価はあまり気にしていない。社員からすると評価は昇格や報酬に影響するので気になるのだろうが、経営者の立場にいると「評価」の優先順位は低いのではないかと思う。

リーダーシップ論においても評価というキーワードは見たことがない。少なくともドライバーではない。しかし、人事制度では評価が中心的課題になる。何故か。それは昇格や報酬に直結するからであり、コストと見ているからである。

昇格や報酬は、外的報酬であり内的報酬ではない。「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ。」という言葉がある。西郷隆盛の言葉であるが、武田信玄が最初にいったともされる。

組織マネジメントにおいて最も重要なものは、目標とフィードバックである。目標とは組織及びチームの共通言語である。共通言語がなければ何もマネジメントはできない。フィードバックはモチベーションの基本とされる。評価ではない。学習を踏まえ次に何をするかを相互確認することである。

デール・カーネギーは人を動かす原則の一つに、「批判も非難もしない」とある。誤りを指摘しても人は変われないというのだ。強い欲求を起こさせることが重要で、人間の行為は「何かを欲しがること」から生まれるという。ジョン・コッターはリーダーシップ論の中で、「達成感、自尊心、理想への参画意識など人間が持つ基本的欲求を刺激し、メンバーが進んで変革に参加すること。」 そのために、「リーダーの日常は、人との時間に費やす。ネットワーク作り、つまり課題作りと人脈作りが重要で、様々な人から情報集め、多面的に考え、協力関係を構築する。」とある。つまり、組織人として共通する挑戦的課題を明示、そして浸透させ、チームで達成する環境を作ることである。評価制度にこだわると公正に評価しようと評価軸にこだわりすぎることがある。厳密に公正に評価するなど不能解である。公正性より納得感の方が重要であるように思える。

報酬が行動を喚起する重要なドライバーであるならば、魅力的な報酬体系を示し、これだけの報酬を得るには何ができないといけないのか、何が条件なのかを社員がわかるようにオープンにすることである。ここで気になるのは、評価は個人対象になってしまうことだ。組織またはチームでなければできないことが重要で、特にリーダーの立場にあるものは組織成果そのものが個人評価といってよい。人事制度が年に何度かの評価時期しか活用されないのは、評価を中心においているからである。評価そのものは必要であるが、評価尺度は行動指針であることが本質であると考える。日本人は総じて分析好きなのかもしれないが、重要なことは行動への喚起である。

勿論、報酬は重要であるので、そんなに気にならない程度の報酬であること、そういう環境であることが望まれる。また、アイデンティティ論から考えると一定の年代になったのであれば、より公的で次世代の価値に繋がる課題への挑戦(ジェネラティビティ)に魅力を感じる組織及び社会であることを願いたい。

執筆:宮川 雅明

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