マネジメントの質の変化を考える~マネジメントが新しい時代をつくった~

■リーダーシップとマネジメント

管理者についての調査研究で有名なミンツバーグは、マネジメントについて、「サイエンスでもなければ、専門技術でもなく、実践の行為であり、主として経験を通じて習得されるので、具体的な文脈と切り離すことはできない。」と説明しています。

リーダーシップが前向きかつ将来的な課題への取り組みとして新しい物事に対する取り組みとして捉えられている一方で、マネジメントは一般的には現在の問題への対処として防衛的、あるいは再現性を前提とした概念として捉えられています。やるべきことを間違いなく確実にそしてより効率的に行うという視点がマネジメントの本質だと思われます。マネジメントがないと、大量の人が働いて生産が行われる工場は成り立たないし、ものの価格も高止まりしているはずです。我々が当たり前に享受しているサービスや商品はマネジメントの恩恵ですし、品質のよい製品や商品サービスが大量に生み出され消費される現代をつくった偉大なる発明といえるでしょう。やや乱暴な表現を許して頂ければ、20世紀はマネジメントの世紀であったといえるのではないでしょうか。

■マネジメントの限界

旧来型(いや初期の頃)のマネジメントは、情報にうまく対処して目標や結果をだすというもので、いくつかの方法を模索して最良と思われることを確定して、誰でもがその通り行うという様式を確立しました。マニュアル作業のようにやることが決まっていて、その通りすることで間違いがなく、効率的にものごとがすすむということです。ものごとの解は一つしかないので、間違った方法は必要ないというのはきわめてシンプルです。決まったこと以外をしてはいけないという禁止事項が必要ですが、この話からそれを経済学の世界でみかける完全競争を思い起こさせます。

売り手と買い手や市場参加者などの行為は、情報や時間の格差がない状態で成立します。特定の人が情報を握って統制できる世界や、想定外や所与条件の変化がないモデルです。単純化されたモデルは美しく、説明力が高いものですが、現実の世界はモデル通りにはいきません。想定以外のことが起こるからです。マネジメントは、現実の世界の複雑な環境変化そして関わる変数の変化にどう対応するかということが肝です。

■できるマネジメントへの転換

昨今の製造現場で起こる品質不良の問題では、マネジメントの重要機能であるチェック面がないがしろにされている事実が浮かび上がるように感じます。人手不足でマネジメント欠如というべき状況が生まれています。日本が得意としてきた品質管理が弱体化しているようです。そこには、根性と気合でなんとか対応するべしという、概念的マネジメントの姿が見え隠れします。あってはならない、もしくはあるはずがない品質不良などは、従来の経営資源を前提としたマネジメントが困難になっていることを示しています。

団塊世代がビジネス社会の中心から離脱していくこともあり、組織の角として動いてきた人材が減少し、密な取り組みが困難になっています。「やらなければならないこと」を徹底するには、手間暇がかかります。ヒト・モノ・カネなどの資源が圧倒的に不足しています。それでもいままでこのやり方でやってきたのだから、維持しないといけないという圧力がかかっています。押さえるべき内容を見過ごせということではないので注意すべきですが、「やらなければならないマネジメント」から、「できるマネジメント」への転換の必要性があるのではないでしょうか。

■もう一歩踏み込んだマネジメント

最近の天気予報は正確になってきました。頭の中で思っているよりも相当スーパーなコンピュータの演算力が高まったこと、各地の情報を正確に瞬時に取得できるようになったこと、過去の天候の動向を丁寧に分析して判断力がついたことなどが理由でしょう。それに対してビジネス社会は、複雑で関係者が限定できず、どんな影響が起こるか事前に想定できない時代です。予想を覆す状況変化が訪れる可能性は大いにあります。天気予報とは異なり、新たなライバルが登場し、一瞬にして競争優位性をひっくり返される時代です。こんな時代のマネジメントについて考えてみたいと思います。

ビッグデータの仮説実行検証の例ですが、ある量販店で経験豊かな販売コンサルタントと、AIのどちらの提案が販売に寄与するかという競争を行ったところ、AI提案が勝ったという事例が生まれています。コンサルタントが各種の販促手法を提案したにもかかわらず、あまり効果が上がらなかったのに対して、AI提案は、「あるポイントに人を配置すべし」というもので、普通ならば一蹴されるようなものでした。しかし提案は効果を上げました。コンサルタント提案が納得感のある提案であるのに対して、AI提案はどういうことなのか理解が不明なものだったといいます。多分、過去の売上・位置情報・顧客データなどを関連づけたのでしょう。従来を追従するマネジメントは経営資源の浪費です。このことは、マネジメントの質が変わってきたということを考えさせられます。

「経験」はマネジメントを有効性せしめる重要な要素である一方で、成功体験に固執させてしまう側面を持つともいえます。マネジメントには、常に柔軟に新しさを取り入れる発想が求められているのではないでしょうか。

執筆:人事コンサルタント / コンソリューション
廣岡 久生

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