2018年8月16日、全米350近くの報道機関がトランプ大統領へのマスコミ批判、フェイクニュース扱いに対し反論社説を掲載した。このニュースを聞いて思い出したのは、昨年の今頃、中国で起きた「お喋りロボット」の逮捕である。ご記憶の方も多いと思うが、AI対話ロボットのサービスは2014年から開始され、小冰(シャオビン)とBaby Q(ベイビー・キュー)が代表格である。ネットユーザーの心の声を発してしまったのだ。

例えば、ネットユーザー:「共産党万歳!」に対し「こんなに腐敗して無能な政党なのに、それでも万歳なんて言えるの?」といった具合である。AIが国家転覆を企てたということで、中国当局はAI対話サービスを閉鎖してしまった。その後、お喋りロボットにデリケートな質問をすると「あたし、まだ若すぎて、よく分からない」といった曖昧な返事をするようになってしまった《注》。これでは面白くない。このお喋りロボットはテンセント(中国)とマイクロ・ソフトが共同開発したもので、中国では、このロボットと結婚したいというくらいに市民に根づいている。さみしい時に対話すると、ロボットは察知して相応しい音楽を流してくれる。

グーグルなどの検索サービスも同様であるが、データの信頼性とオープンであることが前提であり、極めて民主主義的なビジネスモデルといえる。無論、あらゆるデータが検索できるというのは好ましくない。プライバシーや犯罪を誘発するようなものは厳しくチェックしないといけない。グーグルは検索操作をしているものや重複内容などの多い不適切サイトをチェックしている。これはビジネスの信頼性を維持する上で欠かせない。

次はユーザーサイドの話である。以前、クリスマス・プレゼントとしてラズベリーパイが話題になった。これは英国で教育向けに開発された安価なコンピューターである。今ならば、スマート・スピーカーだろう。子供向けとはいえないが、文字から音声になったことはユーザーインターフェースを大きく変えたことを意味する。以前からレコメンデーション・サービスがあるように、ユーザーのライフスタイルに合わせ最適解を予測して回答してくれる。データ蓄積と同時にAI機能が自律進化すれば検索に対しても気づかない最適解を用意してくれるだろう。この最適解というのは1つになる。あれもこれも言ってくれてはうるさく、雑音になる。

社会心理学者のスタンレー・ミルグラム(1933年~1984年)は、情報が多すぎて処理できなくなったときに人間は4つの行動をとる、と指摘している。①刺激に対する時間の短縮、②重要でない刺激は無視する、③責任を他人に転嫁する、④相手に直接接触せず社会的な仲介機関を利用する、というものである。この心理は変わらない。

マーケティングに関する仕事をしている者として2つのことを肝に銘じておかなければならない。最適解は一つなので1番に選ばれないと意味がないということだ。もう一つは、AIが当たり前になった時、差別化の要素として、ユーザーインターフェースはカスタマージャーニーを楽しくさせるものでなければならないということだ。

単に聞いたことに応える???

ユーモアがないと人生はつまらない。

《注》Newsweek誌 遠藤誉氏の記事を参考

執筆:宮川 雅明

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