正しい目標管理(1) グローバルスタンダードの目標管理

■ はじめに

最初に自己紹介をさせていただきます。社会人となって最初に関わった仕事は国内系企業の海外子会社の経営支援で、その中には人事管理もありました。その際、海外企業の人事の仕組みが、日本企業の人事の仕組みに比べて非常に納得性の高いものであることを知り、大変印象に残ったものです。MBA取得後、カナダ・トロントにて会社を立ち上げたとき、人事のマネジャーを採用して人事制度を導入しましたが、それがヘイ・システム*でした。その後、マッキンゼーを経て1996年にヘイ・グループに移り、以来、組織・人事コンサルティングに関わってきました。(2006年に独立、2017年 東京工業大学にて博士号を取得。博士論文のタイトルは「組織開発の理論化と実証研究」)

「正しい目標管理」シリーズでは、人事における最重要テーマである「業績評価」の問題にフォーカスします。そして、グローバルスタンダードとされるヘイの成果主義人事制度の考え方をベースとし、日本の上場企業への私のコンサルティング経験から、業績評価制度とその運用のエッセンスをなるべくわかりやすく説明していきます。

業績評価制度としてこれから説明する「PMS(パフォーマンス・マネジメント・システム:業績管理制度)」は、「社員一人ひとりが業績目標の設定と達成を通じて意欲的に仕事に取り組み、企業風土自体を成果志向に変革することで、会社の業績を最大限高めること」を目的としたマネジメント・システムです。PMSは、全社の経営目標を社員一人ひとりの業績目標に結びつけるとともに、各人が達成した成果の会社業績への貢献度を公正に評価し、処遇に反映していくためのしくみです。日本では一般に「目標管理制度」と言われています。
 
■ グローバルスタンダードの目標管理

目標管理制度というと日本では様々に説明されていますが、ここでは基本に戻り、グローバルスタンダードとされている目標管理を紹介します。

1)そもそも目標管理とは何か?
目標管理は1950年代から60年代にかけて、アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーが提唱したもので、正式には「MBO(Management By Objectives(and Self Control):目標による管理)」です。ドラッカーによれば、「今日企業が必要としているのは、個々人の力と責任に広い領域を与えると同時に、彼らの志や努力に共通の方向を与え、チームワークを打ち立て、個人的目標と共通の利益とを調和せしめるような「経営原理」である。これらのことをよく成し遂げられるのは、目標設定と自己統制とによる経営しかないであろう。」(出典:ドラッカー「現代の経営」)とのことです。

2)グローバルスタンダードの目標管理とは何か?
グローバルスタンダードの目標管理とは、ドラッカーの考え方をベースとしていますので、マネジメントに基づく業績目標管理です。マネジメントということを正確に理解し、それをきちんと実行していけば、合理的で納得性の高い評価が行われるという考え方です。ですから、よりよい業績評価を行うためには、評価の方法論だけを修正するのではなく、社内のマネジメントのあり方そのものから再検討することが求められます。

ここで、マネジメントとは、たとえば、部下に対して「もともとの計画ではこれだけの数字を達成することになっているが、今ここまでしかできていない。そこで、このような対策を実施して、なんとか計画通りの数字を達成するように」ということです。つまり、マネジメントとは、明確な計画を策定し、それを意識しながら、達成のためにあらゆる問題解決を行うことを通じて計画通りの成果を生み出すことなのです。ですから、「マネジメントに基づく業績評価」でいうマネジメントもこの意味で考える必要があるのです。

具体的には、マネジメントに基づく業績評価とは、以下の点が押さえられている必要があります。

● マネジメントサイクルに基づいた業績評価であること
● 個人の態度や能力ではなく、あくまで仕事における業績評価であること
● 成果主義に基づいた業績評価であること
● 成果責任の枠内での目標設定をベースとした業績評価であること

次回以降で、上記四点について説明していきます。

*ヘイ・システム
職務等級制度・役割等級制度において、職務や役割の価値の大きさを決める方法として日米の大手企業が参考にする米コンサルティング会社ヘイ・グループ(Hay Group) が開発したシステム。このシステムでは、職務や役割を 「インプット(ノウハウ)」 → 「スループット(問題解決)」→ 「アウトプット(成果)」の各面から捉えて評価して格付けする。

【補足】
このシリーズは正しい目標管理とその実務にフォーカスしています。人事制度を構成する3つの柱である「等級制度」「評価制度」「給与制度」は、すべてが重要な人事諸制度であり、「目標管理」は、これらに強く関連・影響を持つ組織マネジメントの概念です。目標管理の機能が有効に発揮されない時は、人事諸制度に問題があったり、これらの相互性に問題がある場合もありますので、目標管理そのものだけでなく、全体を点検し見直す視点も必要です。

執筆:髙橋 宏誠

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