プロボノという働き方改革

■副業・兼業の期待と現実

働き方改革の掛け声が続く中、筆者の周囲でも人事と個別に交渉して副業の了承を取り付けたという話を聞く機会が増えた。しかし、会社として副業を全面的に解禁したという話は一部の大手企業以外からはほとんど聞こえてこない。本業以外での仕事で収入を得る「副業・兼業」は、柔軟な働き方の環境整備の一環として、その普及促進が図られることになった。そのガイドラインでは働き手・企業共通のメリットとして、離職せずに別の仕事に就くことで社内では得られないスキルや知識が獲得できることを第一に挙げている。

これは副業・兼業がP・Fドラッガーが提唱した「パラレルキャリア」につながるという考え方を反映していると思われる。ざっくり言えば、「組織を超えた自律的な活動が本人にも組織にも役に立つから副業・兼業を推進しましょう」、ということであろう。しかし、冒頭述べたように副業・兼業の足取りは重い。その背景には就業規則の問題だけでなく、労働時間の通算や企業慣習など様々な要因が潜んでおり、一足飛びにはいかなそうだ。そこで柔軟な働き方を促進するもう一つの方策としてプロボノに触れてみたい。

■プロボノという選択肢

プロボノとは職業上のスキルや専門知識を活かした社会貢献活動のことである。具体的な統計データはないが、日本では2009年ごろから広まったようである。プロボノを推進するNPO法人として『サービスグラント』や『二枚目の名刺』などが有名である。筆者自身は企業に勤めながら中小企業診断士の資格や仕事で得たスキルを活かし、地域でのプロボノ活動に取り組んでいる。詳細な紹介は割愛するが、例えば図書館のイベント企画、大学の地域活性化プログラムの支援、小規模事業者への戦略提案などを行っている。

きっかけは社会貢献という高邁な動機ではなく、育休中にMBAでの学びを実践するため、たまたまプロボノという手段を選択したというのが正直なところである。純粋に社会貢献に取り組んでいる方には怒られるかもしれないが、副業・兼業が曖昧な就業規則をかいくぐるよりも、「社会貢献」としてしまった方が面倒なく自由に活動できると考えたわけである。きっかけはさておき、収入よりも実践の場を求める企業内勤務の中小企業診断士は少なからずおり、地域とビジネスの相互作用による「共育」をコンセプトに、草の根の活動を細々と続けている。

■プロボノはスキルアップに効くのか?
 
さて、こうした活動をしていると決まって問われることがいくつかある。その代表が「仕事や家庭と両立できるのか?」と「なんの役に立つのか?」である。

1つめについては、家族の理解と協力によるところが一番大きいが、隙間時間や有休などを活用することでそれなりの活動はできている。どうしようもない場合は子どもと一緒に打合せにいくこともある。会社では許されにくい子連れの活動も地域では許容されることが多い。最近では両立というよりも、生活の一環に組み込まれている感じになっている。

2つめ対する回答は正直悩ましい。この手の質問は、たいてい「リーダーシップ」や「論理的思考力」といった仕事直結で役立つ具体的なスキルがどの程度あがるかという答えを期待している。冒頭にあげた、社外での活動がスキルアップにつながるという前提を覆すことになるが、正直なところ自分ではよく分からない。少なくとも「●●力が■%あがりました!」などと言えないのは確かである。

ただし、である。自分で活動するフィールドを探し、会社や役職の枠を超えた人間関係をつくり、会社では遭遇することのない障壁にぶつかりながら正解のない問題に取り組むことが、人の成長に何も寄与しないとは言えないはずだ。一緒に活動する診断士にとっても、苦手分野に取り組んだり、新しいやり方を試行したりする場になっている。また、会社に引き籠っていては接することのない世界に実践を通じて触れることが、新しい気づきを得ることにつながっているようである。筆者にとっても、会社ではできない様々な経験がライフキャリアの充実につながっている。

■プロボノを促進するのは誰か?
 
副業・兼業に限らず社外での活動が広がらないのは、制度が整い得られるものが明確にならないと動こうとしない働き手にも一因があるように思う。そもそも業務に必要なスキルは社内にある既存の物差しでしか評価できない。しかし、今や正解がある領域は減り、与えられた問いに大勢で取り組む時代は終わろうとしている。自ら問題と答えをみつけ動くことが求められる中で、制度がないから、得られるものが分からないからと躊躇していてよいものだろうか。

一方、周りの動向ばかり気にして従来の制度や慣習を積極的に変えようとしない企業側にも問題はある。成果がみえない活動に取り組むには経営者や人事部門の後押しが必要である。社外での自発的な活動を本人任せにせず環境を整えることが、会社の魅力づくりや働き方改革につながるのである。プロボノで何を得られるかは本人と会社次第なのだから、誰が促進すべきか明らかであろう。


執筆:中小企業診断士
ほんだ とよすけ

一覧へ戻る

HABSとは

top