改善と組織文化~なぜ対症療法を繰り返してしまうのか~

「学習する組織」の5の規律の一つに「システム思考」がある。これは構造的にとらえる思考である。特には陥ってしまうパターンをいう。システム原型である。このパターンは8つあり、「応急処置の失敗(Fixes That Fail)」や「問題のすり替え(Shifting the Burden)」などである。

働き方改革の影響か、改善に関する問い合わせが以前より多くなってきたような気がする。これまで日本企業の多くは改善など生産性向上に取り組んできたはずであるが、何故また改善なのだろうか。実はナレッジワーカー(ホワイトカラー含む)の生産性はあがっていないからだ。新前川レポートで指摘されて以来、実現されていない。

かつて私の師匠から「ホワイトカラーとは黙っていると仕事を増やす」と教わったことがある。業務システムを導入しても、新たな製品やサービスはどんどん増える。標準化の大敵は例外管理なのであるが、その例外がどんどん増える。また、システムの見直しと製品・サービスのライフサイクルにはギャップがあるので、必然、システム以外の仕事も増える。

「応急処置の失敗」というのは、ある問題に対して応急処置的に解決策を施した結果、一時的に問題の症状は緩和されるが、しばらくすると当初の問題症状が再発し、前よりも悪化するといった意図しない結果となるパターンをいう。このような場合、同様な応急処置を重ねて行えば、問題が次第に拡大していくことになる。

対症療法を施すことによって、一時的に問題の症状が軽減または消滅するため、より根本的な解決を図ろうという意欲が低下する。しかし、時間が経過すると問題の症状は再び現れる。そこで、もう一度対症療法を実施する。その対症療法への依存が、根本的解決策への関心を低下させるという副作用を生んでしまう。これが「問題のすり替え」である。

どうしたら良いのだろうか。2つある。

ひとつは改善の基本に戻ることである。問題の定義は現状とあるべき姿のギャップである。表現として31文字(5・7・5・7・7)位になるだろう。多くはあるべき姿を明確にしていない。現状分析でわかるのは現状であって、問題とはあるものではなく「するもの」である。今を観るのではなく、将来そして本来どうあるべきかを描く必要がある。離職率が多いことは事実かもしれないが、問題とは限らない。例えば、コンサルティング会社はアップorアウトなのでむしろ好ましいかもしれない。

もうひとつは構造化することである。分解して図解することであるが、これだけでは程度がわからない。行動様式を設問化し、相関係数をとることだ。組織文化や意識調査の診断などでもアンケート調査は行われるが、目的は分類化や傾向を観測することで真因を発見し対策を見出すことではない。前者と後者では設問設計そのものが異なる。

頭が痛くて頭痛薬を飲んで治る人もいればアレルギーを起こす人もいる。むしろ足の裏を押したほうが効く人もいるだろう。組織文化(風土)とはそういうものだ。他社で有効だとされる処方箋が効くとは限らない。体質が異なる。しかし、とりあえず何とかしないといけないので何かしらの処方を施し、やりましたという説明が出来る状態を作って、「応急処置の失敗」に陥ってしまう。さあ、本気で真因を発見し恒久措置を施してみたくなっただろうか? 行動を変える第一歩である。

執筆:宮川 雅明

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