残業廃止でAIを活用~人間の仕事の本質~

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2018年08月31日

私の会社では6年前から在宅勤務を導入している。コンサルタントは職業柄、多くの情報をキャッチアップする。雑誌、書籍、ネット、報告書、ネット上のバスワードなどなど。情報はその都度分析し、決着をつける思考訓練をしておかないと情報センスが鈍ってしまう。「センスが鈍いのは何をやっても駄目」というのが私の師匠の教えの一つである。在宅勤務の導入はかなり以前から考えていた。何に時間を使っているかを調べた結果、移動時間がムダということに気づく。2時間あれば分析、インタビュー、シナリオ、情報収集といろいろできる。出かけるなら百貨店や商業施設にいって観察した方が勉強になる。

カルビーの松本晃会長は働き改革の本丸は残業代だとし、残業代を払うという制度自体無くした方がよいと言っている。経営サイドからすれば、熟練した社員を安い時給で使えるなら残業代を払っても、結果的には節約になるのかもしれない。会社にとっては残業代の金額自体は高くない。新しい人を雇うよりも、今いる人にたくさん働いてもらったほうが採算は合う。ちなみに海外は年俸制であることが多く、また残業代計算における割増率も高い(50%から100%、日本は25%から50%)。これは賃率(一定単位に対して定められた賃金額。賃金率ともいう)の問題ではなく、制度自体がなければ誰も残業をしなくなり、生産性があがる、という提議だ。

残業代を払うという制度がない=だらだらと残業する意味や必要がないとなると、何がいいかといえば、考えるようになるという点である。私は日本で最初にホワイトカラーの時間生産性コンサルティングを行ったと思っているが(1987年5月の「経済審議会建議─構造調整の指針(新前川レポート)」でアメリカやイギリスの水準を下回る年間総実労働時間1800時間を目指すことが指摘された。以来、ホワイトカラーの生産性は継続課題である)、業務改善というのも結構大変なものである。師匠から教わったもう一つのことは、「人は黙っていると勝手に仕事をつくる」ということだ。

これまで多くのホワイトカラー部門にERP、CRM、グループウェアなど基幹及び業務システムが導入され、その維持費は固定費となっておりコストに占める比重も小さくないはずだ。労働生産性=付加価値/従業員数であり、労働装備率(固定資産/従業員数)×設備生産性(付加価値/固定資産)に分解される。IT投資などにより仕事インフラが充実されれば、労働装備率は上がる。しかし、そうした仕事インフラが付加価値を上げていなければ結果コストだけ増えたことになる。それだけ仕事に対するリクワイアメントが高くなったのかもしれないが、装備が充実した分、人が減るか、付加価値を高めていなければムダな投資になる。

付加価値が出ないとなるといよいよAIの出番となる。AIを活用することで離脱顧客の予測や見込み顧客の予測、事前修理のシグナルなど様々なことができるようになるだろう。では、AIを導入したからといって本当に労働生産性は高くなるのだろうか。残業も無くなるのだろうか。40年近くホワイトカラー(ナレッジワーカー)の生産性に関与してきたが、なかなかそうは思えない。AIに使われ、どう使うかに振り回され、むしろ残業が増えるのではないかとさえ思える。

AIを使うのは人間で、人間はAIができないことをやらないといけない。AIの機能を分類と予測と定義すれば、どのように分類し予測させるかの道標をデザインするのは人間である。やはり、本質は変わらない。考えることである。人の時間を見ると、インプットやアウトプットに使っている時間が殆どで、考える時間(情報を咀嚼し、何が問題かを定義し、対策とプロセスのシナリオを考え、心を決めて行動する時間)は意外と少ない。

少し乱暴かもしれないが、考える環境に追い込む一つの手立てが残業代なしという方法かもしれない。そして日本人はルールを変えられた方が頑張る。ただし、前提として基本給または年俸を高くし、浮いた分は社員に還元する必要はある。

執筆:宮川 雅明

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