集団天才

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2018年09月17日

2003年、H.チェスブロー博士が提唱したオープンイノベーションは、博士のその後の著書を読むと時代の変化とともに進化していることが伺える。最初は新技術開発が焦点であった。第2段階はビジネスモデルが焦点である。ビジネスモデルは他業界の成功モデルを参考にするものである。第3段階は著書の題名『Open service innovation』にあるようにサービスつまり顧客体験(または経験)が焦点となる。

企業が顧客の求めるものをわかっていて、顧客が気づいていなければ、「提案」で対応できる。しかし、顧客自身何が欲しいのかわからない状態、或いは分かりたくない心境、驚かせてほしいという期待がある時代においては、企業は顧客と一緒に考えることが欠かせなくなる。そこで何かアイデアを顧客に提示すると様々な反応が返ってくる。池に小石(大きい石ではリーンスタートアップにならない)を放り込むようなものだ。ユーザーイノベーションである。

オープンイノベーションの目的は新たな事業の創出と既存事業の進化である。それを素早く、低コストで行うための手段である。技術に関するものであれば提携や出資などであり、ビジネスモデルであれば既存業界にないスタイルを、バリューチェーンを超えリデザインする。そして競争ルールを変える。カスタマー・エクスペリエンスであれば、新たなベネフィットの創造に協創のプロセスを組み込み、それ自体が市場への発信となり、拡散され、市場の声を検証すると同時に市場浸透を図ることができる。換言すればオープンイノベーションは、時間、コスト、拡散ととらえることができ、この3つの成果が見込めないものは良いアイデアであっても成功は見込めないということになる。

インキュベーターやアクセラレーターといった専門サービスが生まれていることから、システム開発がアジャイル開発に移行しているように、事業開発もアジャイル型に移行しているのだろう。事業開発に2年も3年もかけてはいられない。市場も変化してしまう。そこでアクセラレーターは2年かかるものを2ヶ月程度で消化してしまう。想定される事業課題をバッタバッタと処理していくのである。社内人材だけでは、なかなかそうはいかないということだ。

三人寄れば文殊の知恵という諺があるが、烏合之衆という言葉もある。

昔々に私が所属していた組織は戦前から続くコンサルティング組織である。大先輩から「集団天才」がチームの本質だと教わった。現在は、業務は属人化し、一緒に飲み・語ることもなく、そそくさと帰って心身を癒す時代なのだろうか。社内で自由闊達に議論ができない組織が、外集団と議論してイノベーションなど起こせるだろうか。社外メンバーなのでビジネス・スタイルは異なる、立場も意識しなくて済む、尊重し、否定せず議論ができるのだろうが、社内ではそれができないというのも少しさびしい。

目的のないところにマネジメントはない。オープンイノベーションを取り入れ、アイデアソンをやっても、バリューチェーンを超えて議論をしても、何をしたいのか、夢や意思がないと収斂しない。リーンスタートアップも目的地のない地図を何度もさまよう結果となる。戦略は外部環境から学ぶことができるが、真のイノベーションは内なるもののはずだ。外から技術を買うのもよし。協業もよい。しかし、今のチームで夢を持って自由闊達に議論し挑戦する文化がなければ外の智慧を活かすことはできないのではないだろうか。外に求めるのではなく、外からやってくる魅力を発見したい。

執筆:宮川 雅明

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