予測の難しさ~努力の積み重ね~回り道が近道

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2018年12月05日

■理論的・科学的とは

量子力学で多世界理論を提唱しているドイチは、科学理論の目的は、「予測」ではなく、「説明」にあると主張しています。まったくの門外漢ですので、表面的なとらえ方であることをお詫びしつつ、因果というものの不思議さと奥深さを考えさせられます。A→Bを理解した気になることが出来るかもしれませんが、実証して明らかにしないかぎりは科学でないということでしょう。社会科学の世界でも統計が必須のこととなっています。個人の経験に由来する感覚は大切ですが、それはあくまで個人的な出来事を説明したに過ぎず一般化できず、ものごとの確実さや正しさを約束したものではありません。経営という人が関わり、関係要因や相関が複雑である世界においては、必ず結果が出るという確実な方策は見当たりにくく、試行錯誤のなかでコツコツ事例を積み上げていくしかないのかもしれません。いわば経験の学問なのでしょう。個人的な体験を持論化していく必要があります。

話は変わりますが、2019年平成最後の夏は、高校野球が第百回記念大会として盛り上がりました。春夏の大会連覇や選手がタレント揃いであるということや、いわゆる甲子園的なドラマチックな展開が関心を高めたのでしょう。試合を見ようと始発電車で甲子園に向かったのに、すでに満員札止めだったという話が聞かれました。そのなかで話題となったのは、全力校歌斉唱の秋田県立金足農業高校でした。エースで活躍した吉田輝星さんは、プロ野球ドラフトでは日本ハムから1位指名を受けました。並み居る高校野球選手の中で最高級の評価を受けたわけです。ところがドラフト後の報道によると、吉田さんはプロ野球志望を両親から反対されていたそうです。家族で将来のことを話した時に父親はなにかと失敗する話ばかりを繰り返したといいます。それに対して吉田さんは、どこの世界にも失敗はつきものだから、失敗を恐れては何も決められない、自分は成功するために頑張る。これまで練習をすることで実力がついた。これからはそれ以上の努力をして、今まで以上の場所に行くという強い気持ちを持って成功すると返答したといいます。

■「努力」が因果の最大の因子に

話は戻りますが、予測とは因果を示します。ただしその因果は曖昧で、不確定や要素が多く含まれていることで、結果に大きな影響を与えます。予測にはあくまで予定調和的な色彩が含まれています。環境の変化などもあり、また人が介在することで結果は大きく変化します。高校野球で活躍したから、必ず成功が約束されるわけではありません。ましてや努力もしないで、成功するはずもありません。人はつい物事を決めつけることがありますが、能力よりも努力の積み重ねが結果を左右します。

ドゥエックの能力観は、やる気には能力に対する考え方が影響しているという考えです。自分の能力は天賦で固定的であると思えば、努力をあきらめてしまうということです。たとえ失敗したとしても努力次第で挽回が可能であり、いまの能力を変化すれば成功の可能性があると認識できると、努力し続けられるということです。この考えを派生させれば、他者に勝ちたいとか評価を受けることを目標にすることで行動を誘発した場合には、他者に負け評価が得られないと努力しなくなります。自分の能力を高めるという目標達成のプロセスに関心が向かう場合にのみ、持続的な努力によって結果が得られるのです。勝負とは長丁場です。一度くらいの勝敗では、人生の勝負はつかないのです。最後まであきらめないことです。

また、セリグマンという米国心理学会の会長を務めた研究者は、学習性無力感という考え方を示しています。長い間抑圧的な刺激を受け続けると、自らその状況が当たり前だと思って、なにも行動しなくなるということです。自分はだめだと思い込むと、なにも行動しなくなると考えれば良いでしょう。楽観主義者は健康状態もよく、感染症にもかかりにくく免疫力があるなどといいます。逆に悲観主義者は無気力で希望を失いやすく、簡単に諦めてしまうため能力以下の成績や業績しか上げられないといいます。やる気というと、とらえにくい面がありますが、楽観的でなんとかできると思えるように、計画的に成功体験を積んでいくことが、長期間にわたる成果を高める源泉である意識や能力を強化することになるのです。ひとのやる気が大いに結果に左右することがわかります。吉田さんはプロ野球の世界で自分の力を信じて、努力し続けられるでしょうか。八面六臂の活躍を期待したいと思います。

さて予想(よそう)をひっくり返すと、「うそよ」となるとは前職の上司の口癖でした。世の中の常識めいたことが必ず約束されているのではないということを揶揄していたのでしょう。同じように予測(よそく)をひっくり返すと...これまでにしておきましょう。将来のことなど約束されたことではないのです。未来を信じて継続的に努力することこそ大切です。

執筆:人事コンサルタント / コンソリューション
廣岡 久生

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