研究開発部門の事業開発

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2019年03月22日

事業開発に関する相談が多い。私には技術イノベーションはできないので戦略やマネジメントの話になる。事業開発には新規と既存をベースにしたものがある。日本の組織の殆どが既存をベースにしたアプローチのように思える。成功の条件は強みを活かすか時流に乗るかであるから、既存技術を活かすのは間違いではないが、どうしてもプロダクトアウトになる。「こんなものができたが何処かに活用できないか。」「この技術や部品をどこかに活用できないか。」という市場探しになる。

決してそれは間違いではないが、成熟した市場において、また経験経済が重視される市場環境において、代替を提案することは機能的ベネフィットを訴求することになり、コスト競争に陥る可能性が高い。課題は市場オリエンテッドな事業開発であろう。

私のつたない経験では、研究開発の事業開発を促すマネジメントは8モデルあるように思える。

① 自由時間 ② オープンイノベーション ③ エコシステム ④ 企業内大学 ⑤ マーケティング ⑥ コンピタンスモデル ⑦ メンター ⑧ 素材 である。

① 自由時間というのは3M社の15%ルールにあるように好きなことをやる。豊田中央研究所も似た文化があるように思える。予算管理や時間管理などで過度に縛られると、好き勝手なことができないものだ。Bootleggingやshadow-playといった所謂闇研が有効であることはわかっている。この自由時間というのは創造的空間も含まれる。オフィスにストリートやカフェを作っただけでは効果がないことは立証されている。また、アレン曲線(トーマス・アレンMIT教授)で立証されているように、研究員間の交流頻度がオフィス間の距離に応じて指数関数的に減少することも発見されている。自由時間を設けたからといってイノベーションが起こるとは限らない。アフォーダンス(行動の可能性を提示するという概念)を考慮したオフィス設計によって自由時間も生きてくる。 

② オープンイノベーションは多くの企業で試行または取り組まれているが、国内でうまくいったという話はあまり耳にしない。自由時間を活かすことができずにオープンイノベーションができるとは思えない。また、フィリップスやP&Gなどの事例を見ると厳しい業績やリストラに直面した結果に成し得たことで、いわば背水の陣であり、通常の状態で行うにはよほどの危機感の共有がなければ難しいのではないか。強い危機感がなければリスクを冒して勝負しようとはしないだろう。ここに求められるのは賢さだけでなく、むしろ好奇心と勇気と行動ではないか。そうでなければ、家族的経営のようなSME(Small & Medium Enterprise)はできてもイノベーション主導企業は生まれないのではないか。

③ エコシステムはオープンイノベーションの場である。1999年、MITの卒業生によって設立されたCambridge Innovation Centerはその代表的一つで、アントレプレナーのコミュニティーとして設立された。多くのスタートアップ企業やアクセラレータなどが集まっている。日本でも似たような動きはあるが、空気間が違うような気もする。ちなみに、CICは日本に対して「リスクを取ろうとしない」ことを問題指摘している。

④ 企業内大学は研究開発に特化するものではないが、多くの企業で、単なる研修ではなく、事業開発や起業に向けての人材育成プログラムが取り組まれている。1956年に設立されたGEのクロトンビルが有名であるが、最近はチームワークを重視した流れになっているようだ。日本はそのチームワーク、組織の核となるチームに課題があるように思える。

残りの4つについては次の機会としよう。

執筆:宮川 雅明

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