長期戦略としてのブランド

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  • 宮川雅明
  • 経営・事業戦略

2019年02月22日

仕事柄、三寒四温とか桜開花といったニュースを見ると、中期経営計画の時期を迎えたと連想してしまう。最近、経営計画で目立つのが「働き方改革」である。ブームに終わって欲しくはない。気になるのは「長期戦略」だ。近頃目にしなくなった。

私がコンサルタントになった40年近く前は長期経営計画というものがあって7年計画だった。中期計画は5年。上場申請書に添付したものだ。今、中期計画は3年が一般的だろう。VUCAの時代(Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確実さ)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ))であるので短期的、流動的になっているのかもしれないが、本当にそうだろうか。今を転換期とみれば、長期戦略が必要である。年度計画は1年であるから戦術であり、戦略を示すものではないと思える。

長期戦略として是非考えて欲しいのは、ブランドである。ブランド評価会社によれば、グーグルやナイキは事業価値の50%程度、コカ・コーラは60%以上を占めるという。ブランドの評価方法は様々であると思うが、株価×(ブランド分÷売上)が一般的だろう。

このブランドというのは短期で構築するのは困難である。何故ならブランド・プロミスという言葉があるように、顧客との約束だからである。約束は常に継続し、永く守らないと信頼には至らない。単に「保証します」では、それはリスク対応でありブランド価値と同義とは思えない。

ブランドには3つの側面がある。「認知」と「連想」と「ロイヤリティ」である。約束はロイヤリティそのもので、顧客基盤を構築することになる。何か問題が起きても顧客基盤があれば、重症を負ったとしても瀕死にはならない。改善をすれば復活をする。

事業価値に多大な影響を持つこのブランドというテーマがあまり議論されていない印象がある。何故だろう。経営環境が厳しくなるとどうしても短期的な視座になってしまう。経営には短期で取り組むことと長期で取り組むことの両方をバランスよく持つ必要がある。キャッシュカウで次の成長モデルに投資するポートフォリオのようなものだ。

そして、気になるのがデジタル・マーケティングの動きだ。例えば、「ハブ商品は何か」がデータでわかるようになる。昔、POSが浸透した時代に、2個で幾らといった価格戦略が極めて有効であることがわかると、多くの企業が価格戦略に走った。マーケティングは本来、非価格競争力のはずだ。

ブランドの反意語は何だろうか。コモディティではないだろうか。一旦コモディティ化すると顧客はそのように扱い、社内さえもコモディティとして扱う様になる。コモディティ・ビジネスまたは経済である限り、生産性向上や付加価値向上は見込めない。(ライフラインや生活必需品のようなものは安価であることが望ましく、そうした領域は別のフレームワークで考えることとする。)

グローバル化が進展していく中で、過剰生産力と価格競争が進行し、とりわけ3番手、4番手企業はどうしても価格戦略に走る。それは市場全体が疲弊することに繋がりかねず、賃金も上がらないシナリオとなる。価格優位をもたらすコスト戦略は基本戦略の一つであるが、GDPの70%を占めるサービス業の中には、規模の経済が効きにくいビジネスもある。

ブランド認知を得るのは容易ではないが、得られたかどうかを証明するものは価格であろう。桜の季節が待ち遠しい。

執筆:宮川 雅明

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