社内講師のすすめ~人は自ら教える時に最もよく学ぶ~

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2019年03月08日

中堅層が育っていない。作業は一生懸命やっているが提案がない。挑戦しようとしない。マネジメント能力がない。

こうした話をよく耳にする。勿論、ミドルや管理職だけの問題ではない。ただ、批判や反省だけでは面白くないし、前には進まない。

私の提案の一つは「社内講師」である。研修を受けるのではなく「研修をする立場」になることだ。P.F.ドラッカーは知識労働者の課題は生産性向上であると言う。それは社会的課題であり、生産性を向上させる条件は、大きなものだけで6つあるとしている。

少し脱線するが、歴史を振り返ると、生活水準の向上は生産性向上がもたらすものだとわかる。技術革新が進む現在、例えば病院では、多くの先進的機器が備えられているが、人員は減っておらずむしろ増えている。オフィスにおいても様々なシステムが導入され労働装備率は高まっているが、残業や低賃金アウトソーシングが問題になっている。GDPの70%がサービス業という背景もあるが、生産性向上は至上命題なのだ。

ドラッカーは『マネジメント』で以下のように述べている。

人の自己啓発を助けることほど自らの自己啓発に役立つことはない。
事実、人の成長に手を貸すことなく自らが成長することはありえない。
自らの自らに対する要求水準が上がるのは、人の成長に手を貸すときである。

つまり、自ら教える時に最もよく学ぶということだ。

社内講師というと専門領域を伝承するイメージがあるが、2つの側面が求められる。

1つは専門的知識だ。

専門的知識というのは単に自身の経験事例をまとめるにとどまらない。先達から伝承されたノウハウを土台にして、今流のものを積み上げないといけない。今の組織は属人化が進み、マネジャーもプレイングマネジャー化し、最も重要な使命である育成に十分な時間を投資できない状況にある。自身のキャリアを高めていく上でも、自身の持つものを技術化して教えることだ。教えるとなると厄介で、言葉一つを定義しないといけない時もある。例えば、品質の定義は8つあり、知覚品質も含む(David Garvin,Harvard Business School)。こうした幅と深さを持たなければ教えることはできない。自身の事例も個人的技能としてではなく、共有できるように技術化しないといけない。

もう1つの側面はコンピテンシーである。

単に専門技術があれば良いというものではない。組織のバリューを自身の言葉で伝える役割がある。関連情報に関し常にアクセスをして、情報感度を高めておく必要がある。また、メンバーを元気にさせるEnergizer(エナジャイザー)としての役もある。そして人徳が求められる。

入社20年も経てば何かしらの社内講師をやっても良いのではないか。J.P.コッターが組織変革8段階の8番目として、「成果の定着(継続)と持続的発展」を示している。今の組織は、アウトプットばかり追求し、考える時間を取らず、非効率な試行錯誤を繰り返している側面がある。単に変革プロジェクトに限らず、学習する組織として、日々の業務から学んだものを組織知として財産化していくことが求められている。

マネジャーを育成したいなら、管理職研修などやる必要はないかもしれない。PDCAとは何か、目標とは何か、遣り甲斐とは何か、ミドルとは何か、といったテーマで社内講師をやってみると良い。

執筆:宮川 雅明

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