ムーンショット~困難な高い目標を掲げ、果敢に取り組もう~

イノベーション 人事コンサル 人材・組織開発 目標達成

■ 月面着陸から50年

2019年7月20日は、大いに盛り上がりを見せることだろう。アポロ11号で飛び立ったアメリカ人宇宙飛行士ニール・アームストロングとバズ・オルドリン両名が月に降り立ってから50年を迎える記念の日である。あらためて月に関する様々な視点でのイベントが行われることだと思われる。

地球から遙か38万キロも離れた地での記念すべき一瞬は、テレビで生放送され6億人が見たといわれている。当時の世界人口は36億人だったとされるので、熱狂ぶりは想像に難くない。翌年開催された大阪万博においては、月の石を展示されていた米国館が一番人気となり長蛇の列となったという。

1960年代は、米国とソ連を軸とした覇権争いが各地で発生して、キューバ危機に代表されるような諍いがあった。その一つの現れとしての宇宙開発競争に、終止符を打ったのが月面着陸であった。1960年代前半に、ソ連は動物を宇宙に送り、有人飛行を成し遂げるなど、宇宙開発では米国に先陣していた。アメリカ大統領のジョン・F・ケネディは劣勢を挽回すべく、「我が国は目標の達成に全力を傾ける。1960年代が終わる前に、月面に人類を着陸させ、無事に地球に帰還させるという目標である」と述べて、米国だけではなく世界の人々の夢をふくらませた。その取り組みの成果としての月面着陸であった。それ以来、「ムーンショット(月ロケットの打ち上げ)」とは、困難で費用と時間がかかる取り組みであるけれど、実現すれば大きなインパクトが期待できるというイノベーションを意味するものとして理解されるようになっていた。

■ VUCAの時代のムーンショット

今はモノと情報が豊富であるけれど、先が見通せないVUCA(Volatility変動性・ Uncertainty不確実性・Complexity複雑性・Ambiguity曖昧性)の時代だと言われる。不安感もあり新しいものが生まれにくいという構造がある。既存事業を維持改善する程度では組織と共に、個人の成長とやる気を喚起せず、業務に埋没してしまうことなる危険性が高い。そこで必要となるのが、従来とは異なる発想と価値観転換である。

現状から推し量ると規制や条件が厳しすぎて発想が拡がらず、概してパッとしない考えしか浮かばない。未来からの発想法で対応することが求められる。未来のある時点にこうなりたいという、あるべき理想の姿(ゴール)を先に考えて、何をすべきかのアクションプランを具体化する。そのキーワードとして、ビジネス界で「ムーンショット」が使用されることが多くなっている。基本的には、挑戦的で高く大きな目標を掲げ、向かっていくための合意を意味する。ただし高くて大きな目標だけではノルマや押しつけとなるので、意欲の低減に直結する。

■ ムーンショットを輝かせるために

スコット・アンソニーによると、優れたムーンショットには、3つの要素が含まれているという(「ハーバードビジネスレビュー」What a Good Moonshot Is Really For,May 14,2013)。

① 人を魅了し奮い立たせるもの(inspire)
② 信憑性(credible)
③ 創意あふれる斬新なもの(imaginative)

である。月に人を立たせるという目標が、まさにムーンショットだったとわかる。

また、新しい働き方を示した「ワーク・ルールズ!」(東洋経済新報社、2015年)を著した元グーグルの人事担当上級副社長であったラズロ・ボックは、ムーンショットに関連した重要な視点を提示している。

① 価値あるミッションを提示すること。困難で決して達成しえないと思えるものに向かうことへ力を注ぐことは生産性も向上させる。業界1位というようなものは、達成したときに意味を失う。
② 信頼してやり方を任せる。過度な管理で縛り付けないほうが、働く人も会社もハッピーになる。
③ 自由に発言でき受け入れられると感じられる環境をつくる。失敗しても大丈夫と感じることのできる、安心感のある風土がないと、人はのびのびと働けない。たった一度の失敗で叱責を受けるなら、だれが高くて大きな目標にチャレンジするものか。
④ 多様性を認める創発環境をつくる。いろいろな人との関わりから自然とイノベーションが生まれる。

これらの4つの内容についても、人の力を引き出す要点としてムーンショットを理解することが出来る。また関連して、ただ野心的で不可能とも思えるものに挑戦するムーンショットだけではなく、日々の積み重ねで着々と改善して積み上げるルーフショットをないがしろにしてはいけない、とも述べている。二人の説明から、ムーンショットを提示することで組織を活性化することや個人の力を引き出すことが可能であることがわかった。

最後まで目を通していただいた方には、質問を投げかけたい。
「あなたのムーンショットは何ですか?」

執筆:人事コンサルタント / コンソリューション
廣岡 久生

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