プロボノ活動を通じた学びなおし

キャリアアップ パラレルキャリア プロボノ 働き方改革

■ パラレルキャリアスタートアップの課題

平日は企業で働きながらオフの時間を使い、地域の個人事業・中小企業や団体が、直面している経営課題を明らかにし、解決の糸口を探し出す活動を行っている。

中小企業診断士の資格を活かしたパラレルキャリアを歩み始めたところ、自分自身の課題も多いことを痛感した。中小企業診断士は、企業の現状を分析し、組織・人事、財務、生産管理や店舗経営など網羅的な視点で成長戦略を助言するとともに、国・地方の方針を啓蒙する立場も担っている。そのためには、これまでインプットしてきた知識や経験をあれこれ引き出して実践するためのスキルのバリエーションを持つことや、それをブラッシュアップする必要がある。

私自身は、① 家業の文房具卸会社に関連した店舗管理、② コンピュータグラフィックの事務所を立ち上げ、③ 地方の小売店の全国展開・海外販路開拓、④ 大手電気メーカーの人材開発部門を経験し、現在は ⑤ 重工メーカーで人事、採用、教育を担当している。
 
それでも、中小企業がかかえる課題は様々であり、過去の経験をそのままあてはめるだけでは太刀打ちできない。知識や経験を踏まえたうえで、課題を解決するための多面的で論理的な思考を磨くための取り組みが必要になる。加えて、企業と行政、企業と金融機関、他の専門家とのパイプ役を果たすために、様々な人とのネットワークづくりや信頼関係構築が必要となる、実践の場を重ねること、人とのつながりを広げることがパラレルキャリアでの課題の中心といえる。

■ プロボノ活動「伊丹NEXT Generator´s Academy」の事例
 
参画した活動の1つに、伊丹市立図書館ことば蔵の「伊丹NEXT Generator´s Academy」がある。これは、伊丹市内で事業を行う者を対象にした地域密着の実践的なビジネスプログラムであり、企業で働く中小企業診断士7名がプロボノとして活動した。小規模事業者や団体・個人に、経営的な視点を醸成することが狙いとなっている。

このプログラムは、中小企業診断士の資格を持つ一人のサラリーマンが、市民企画として発案したものである。それが行政機関である市立図書館の他、地域活性化に取り組む公立大学のゼミ活動やNPOとも連携し、半年間にわたって7回にワークショップと補講・個別支援をすべて無償で提供するプログラムとなった。組織や団体ではない個人の活動から生まれた、産学公連携の新しい形といえる。

この活動を通し、新たな学びや、気付きを得ることができ、自分自身の課題解決にもつなげることができた。メンバーのなかには、個人の関心領域を広げるため、例えばBMC(Business Model Canvas)、CJM(Customer Journey Map)、デザイン思考などを学んできた者がいた。事前に勉強会を設けて知識を共有し、参加者のビジネスにあてはめることで、机上の理論だけではない活きた学びにすることができた。私にとっては、ツールを用いたビジネスモデルの策定、課題の抽出など、社内では機会のない経験を蓄積する場になった。

また、経営者のリアルな状況や想いに触れ、新たな気付きを得ることもできた。参加者のうち、古書店を営む経営者は、顧客の購買プロセスにおいてどのような価値を提供できるかイメージするなかで、書籍と顧客との接点を生み出すためのアイデアがあふれていた。また、駅前のCafeの経営者は、飲食のサービスだけにとどまらず、地域市民のつながりを作る役割をさらに進化させたいと考えていた。描いているものを経営者とともに可視化し、具体化していく作業は、事業への想いとこれまで積み上げてきた流れをふまえたものとなり、経営者に寄り添うことの大切さをあらためて感じた。

■ 将来の可能性

事例に取り上げたプログラムは、図書館に加え、大学のゼミ、行政書士、地域のICT化を推進するNPO法人、人材開発に携わる研究グループなど、多様な方々の協力により推進されている。組織化されていない取組みがネットワークをつくり、その中核を担えることは、企業に所属する人間の強みであり、今後のキャリアの幅を柔軟に広げることにつながる。地域、行政に働きかけ、周辺を巻き込む力は、企業内で培ってきた感覚が働く場面でもあるといえる。

政府が進める働き方改革は、企業サイドからの取り組みが主眼におかれがちだが、企業に所属する側の意識のあり方も広い意味では重要になる。副業・兼業を容認する企業が少しずつ増え、働き方が変わるなか、学びなおしは大切なキーワードになると考えられる。

様々なネットワークを活かし、知識や経験を深めながら実践を行うプロボノ活動は、今後も社会貢献、地域活性に一躍を担うものと考えられる。そして、その経験は企業内においても活かされるものとなるだろう。

*プロボノ:職業上のスキルや専門知識を活かした社会貢献活動

執筆:中小企業診断士
鳥生 明美

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