【キャリア自律促進】社員と組織の新たな関係を構築するキャリア形成支援

会社の業態:食品卸売業
従業員:従業員100人~500人未満
担当者:人事部 キャリア開発チーム マネジャー様

社員と組織の新たな関係を構築するキャリア形成支援

食品の卸売業を主業としている当社はパンや製粉などの分野に強みを持っており、近年はプライベートブランドや食品メニューの開発といった加工にも注力しています。地場の小売店とのネットワーク、コミュニケーションが事業の継続・拡大のためのポイントとなりますが、一方で零細の小売店や地域のイベントに対して、あるいは季節や天気といった細かなニーズにも対応するために労働集約的にならざるを得ず、現場の力量に依って大きく成果が変わってしまう構造でもあります。

 課題・背景 

■ 若手人材の流出と疲弊感

当社では自社の業務・管理上のIT化は進めている自負がある一方で、納品先の多くが小規模・零細の小売店ということで、お客様のIT化が進んでいない現状があります。結果として、物流や受発注をはじめコミュニケーション・ツールなどの分野ではシステム化が遅れている状態が続いています。アナログ的で細かなお客様とのコミュニケーションが重要という点においては、競合大手企業の参入障壁になっている側面がありますが、当社の姿勢がどうしても「お伺い型」「対応型」になってしまいがちです。結果として現場は、突発的な業務や突発的な相談、欠品やクレームといった業務に追われ、疲弊してしまうという事態が増えてしまいます。例えば、小売店のイベントやキャンペーンなどに合わせて人員を送り込んだり、通常と大幅に異なる質・量の原材料や加工品が必要になったり、多くの小規模店舗とのやり取りに多大な労力をかける必要があったり、ということが頻繁に発生します。

そのような中、2010年頃から「人」への投資も積極的に進めてきました。具体的には、役員・幹部層の意識合わせのワークショップや、中間管理職層のマネジメントスキル、現場担当の業務遂行スキルの向上など、人事制度(目標管理制度、評価制度の変更)の改革と研修をセットにして展開・実施してきました。

ITと人への投資によって、結果的にある程度システマティックにマネジメントがなされる様になってきました。事業規模としても拡大を続けられました。しかし、その一方で、若手人材の退職は増加の一途で、優秀な現場の人材が流出するという状態が続いていました。これが大きな経営課題となっていました。辞めていく若手人材からは、「会社の方向性が見えない」「今の目前の業務を今後も続けることが私の仕事人生ではない気がする」「希望する職種に異動できない」という声が多く聞かれていました。

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 提案プロセス・実施施策 

■ キャリア考察の機会を通じてモチベーションを促す

これらの課題に対して、講師からの提案は、「キャリア考察の場」の提供でした。講師から見た当社の現状は「業務上のスキルは向上する機会が提供されているものの、それが社員にとって、自身のキャリアにどう活かし、どうなっていきたいのかを考える『場』が無いので、業務の多忙さに対して意味や価値が見出せず、疲弊している。」というものでした。

当社は講師の提案に賛成したものの、懸念していたこともあります。それは従業員が自身のキャリアを考える場を得ることによって、むしろ今の仕事に対して自分自身の折り合いがつかなくなったり、組織としては叶えられない異動願いが大量に出てきたり、という懸念です。結果としてモチベーションの低下や更なる人材の流出に繋がってしまうのではないかと思いました。

しかし、その懸念を議題にしながら、今回の提案をきっかけに、講師を交えて社内で大いに議論させていただきました。そして経営トップと人事が「社員の流出は、魅力的な社内キャリアや職場環境を提供できていない組織側の問題」という考え方にまとまりました。こうした議論を経て、キャリア考察の場を提供する研修を展開していきました。大きく幹部層、管理職層、担当者層の3層に分け、上位層から実施していきました。

まず、経営幹部に向けて「我が社における人材・キャリアについての考え方をまとめる」「まとめた考え方をいかに発信し定着させるか」をテーマに2回の研修を開催しました。次に、管理職層に向けて「我が社のキャリアについての考え方を理解し、担当者(部下)に対してどうキャリア支援を行うべきか」「具体的な面談スキル、部下のキャリア支援スキルの向上」をテーマに2回の研修を実施しました。そして、最後に担当者に対して「我が社の強みと弱みは何か、自身の業務の位置づけと洗い出し」と「自身のキャリアを考え、言葉にする思考の訓練(積み上げ型・バックキャスティング型)」を2回に分けて実施しました。

 成果 

■ 目の前の仕事以外に目を向けたコミュニケーション・ツールの確立

研修自体は非常に良い場となり、確かに研修実施後に人材の流出も減っています。しかしまだ、研修を展開してから短い時間しか経過していませんので、今の時点で人材の流出減を成果の指標としては捉えていません。成果指標としては数年後に設定にしています。

今回の大きな成果は、キャリアについて考え、お互いに話し合う面談(半期に一度)が機能しはじめたことです。面談それ自体は、個別に上司と1時間程度に過ぎませんが、重要なのはお互いにキャリアを考える場が出来たことと、キャリア面談シートというツールがコミュニケーション・ツールとして機能し始めたということです。

人事部としても、提出されたキャリア面談シートを通じて、自律的に考える社員や、仕事を自分事として捉える人材が増えたと感じています。例えば、それまでは現場からあがってくる声として、会社組織に対して〇〇をして欲しい、という「依頼(ある種の不満)」ばかりが目立ちましたが、〇〇をやりたい、○○の支援を考えて欲しいという能動的な「提案」が圧倒的に増えました。また、これまでは現在の仕事が辛いので他の部署に移りたいという避難型の異動願いが多かったのが、このスキルを獲得したい、こんな経験をしたいという積極的な異動願いが増えてきました。これらも人材の質的変化として大きな手ごたえを感じています。いわばこれらを「風土」にしつつ、組織力の強化と現場人材の更なる戦力化&流出減を同時に向上させて、良い状態に持っていきたいと思っています。

 参加者の声 

●「自社の考え方をきちんとまとめるというプロセスが当社の経験として重要。今後の事業継承の際にも必ず必要となる」(幹部)
●「これまで、採用・配属されて以降キャリアについて考える場や情報提供はなされていませんでした。ある意味では「そんなことを考える暇があったら目の前の成果を出せ」という会社の無言のメッセージとして受け止めていた人もいたと思います。それが「自律的に考えよう」「意見はどんどん提案してくれ」というメッセージとして伝わったと思います。」(管理職)
●「キャリアを考えることはなかったです。目の前の仕事だけではなく、今後の長期的な仕事人生についても考えることが出来て良かったです。今、結論を出さなくても良いので、年に1回でも2回でも考えて上書きしていくことが必要だと思います。」(担当者)

 この事例で取り入れた研修メニュー 

#幹部向けワークショップ #マネジャー向けキャリア面談研修 #若手担当者向けキャリアの考え方研修

 キーワード 

#ワークショップ #自律型社員 #キャリア、キャリアビジョン #異動希望・ローテーション

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