品質~顧客の「体験」を設計するために顧客の「背景」を知る~

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2018年04月27日

"ペルソナ分析"と"カスタマーエクスペリエンス"をよく耳にする。ペルソナは"セグメント"とは異なるのだろうか。

セグメントは、例えば年齢やエリアといったデモグラフィックな視点、自然志向や朝型といったサイコグラフィックな視点から、今までにない顧客区分を発見していくアプローチといえる。オリジナルなカッティング・ポイントが見つかればよいが、あらゆるデータが揃っている訳ではない。仮にユニークな顧客セグメントを発見したとしよう。しかし、個々人の価値観やタイプまで把握している訳ではない。それにプロジェクトメンバー内でも全く同じ顧客イメージを共有しているとは限らない。

ペルソナはそうした限界に対する一つの解決策といえる。例えば、「郊外の一軒家に住んでいて家庭菜園が趣味の65歳の男性」といっても性格や美意識そして価値観によって何を買うかは異なってくる。几帳面な性格なのか、ラフな性格なのか。モノトーンでシンプルなものを好むのか、色とりどりの景色を好むのか。菜園を人に見てもらいたいのか、栽培に詳しく植物との対話そのものに価値を置くのか、ではアプローチは異なってくるだろう。

セグメントは80年代から研究や取り組みが急速に進んできた。背景には先進国市場の成熟化に伴い、パワー・マーケティングからディフィラント・マーケティングへの転換がある。今は十人十色というか千人千色といった市場環境になっている。ダイバーシティというのが日常語になる時代である。これは単に個客化が進んだということではない。デジタル社会化による情報化が、ペルソナ分析を可能にし、より深化した個客化への対応として求められている。One to oneマーケティングや個別オーダーと異なるのは、或るペルソナを創造した時、世界中から同じペルソナを組織化するところにある。

ペルソナを創造できたからといってビジネスが成功する訳ではない。"何を求めているか"のストーリーを創造しないといけない。ここでカスタマーエクスペリエンスが登場する。

この考え方はノルディック学派が中心と思われる。取引経済から経験経済への転換を意味し、サービス化が鍵となる。コト消費という考え方は20年くらい前から使われていたが、それをもっとエモーショナルに進化させたものである。

ここでハーバードビジネススクールのデイビッド・A・ガービン教授の品質8定義について触れたい。8定義とは「性能」「機能」「信頼性」「適合性」「耐久性」「サービス性」「美しさ」「知覚品質」である。最初の6つはエンジニアの領域で客観性の側面であり、あとの2つは主観的な側面で芸術家の要素であるといっている。

客観性の側面を追求しすぎるとイノベーションのジレンマのようになってしまう。ブルーオーシャン戦略にある機能比較においても、エンジニアリングの要素からサービス要素(目的によって価値は異なるが)のウェートが高くなっていると思える。

アップルのデザインに象徴されるように、洗練された近未来的なものに惹かれるのは、美しさやHuman Interfaceといった知覚の側面である。洋服選びの時、機能性ではなくデザイン重視で購入した経験は誰でもあるはずだ。また、行動経済学においては、人が必ずしも論理的に正しい選択をするとは限らないことを示している。

芸術性の側面というのは機能的な側面と比較すると時間軸に違いがある。色褪せないものであるから長期的なものだ。昔、100年プリントという写真のキャッチがあったが、最近では人生100年といわれている。確かに100年と考えると色褪せないものが必要になってくるのだろう。カスタマーエクスペリエンスというのは、記憶に残るもの、色褪せないもの、時代を超えて美しいものにヒントがあるのかもしれない。

執筆:宮川 雅明

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